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平成27年司法試験 再現答案


合格していました。
感無量です。
# by mizutamaa | 2015-09-12 13:08
設問1

1、Xは本件命令を阻止するために、差止訴訟(行訴3条7項)を提起すべきである。
2、「一定の処分」(37条の2第1項)
 本件命令によってXは本件取扱所を移転すべき義務を負うことになるから、「処分」にあたる。また、「一定」といえるためには、裁判所が判断できる程度に特定する必要がある。本件では本件命令は本件取扱所を移転させる命令であり、裁判所が判断できる程度に特定しているといえるので、「一定」といえる。
3、蓋然性
 本件葬祭場の営業が開始されれば、Y市長が本件命令を発することは確実であったことから、本件命令を出す相当程度の蓋然性が認められ、この要件をみたす。
4、「重大な損害」
 差止訴訟は、事後的な救済が困難な場合を想定した訴えであるので、「重大な損害」といえるためには、事後的に取消訴訟の提起および執行停止の申立てによっては救済することができない程度の損害をいう。その判断にあたっては、同条2項を考慮する。
 本件では、本件命令が発せられると、直ちにウェブサイトで公表される運用がとられており、これによって、顧客の信用が失われるおそれがある。Xは灯油などの危険物を扱っており、そのような危険物を扱う会社にとって顧客の信頼は重要なものであるところ、いったん信用が失われれば、金銭で回復することは非常に困難である。したがって、事後的に救済することは困難といえるので、「重大な損害」にあたる。
5、「損害を避けるため他に適当な方法」
 かかる要件は、特別な救済ルートが法定されているような場合に否定される。本件ではそのような救済ルートは特に法定されていないので、この要件をみたす。
6、Xは本件命令の名宛人なので、原告適格(37条の4第3項)を有する。
7、以上より、訴訟要件をみたす。

設問2

1、消防法及び危険物政令の趣旨及び内容
 消防法は、火災を予防し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護することを目的としており(消防法1条)、その目的を達成するために、同法19条が準用する同法10条4項が取扱所の位置等を政令で定めるように委任している。これを受けて危険物政令9条1号は取扱所の位置等についての規制を設けている。そして、同号但書では保安物件との間で一定の距離を保つよう規制が設けられている。この但書の趣旨は、製作所そのものの変更がなくても、製作所の周辺に新たに保安物件が設置された場合に移転等の措置を講じなければならないことを避ける点にある。すなわち、保安物件との間で一定の距離を保つことによって、保安物件内にいる人に対する火災の危険を避けるとともに、製造所の移転に伴う負担をできる限り避けようとする趣旨である。このように、同号但書の判断には専門技術的な判断を要する。また「安全であると認めたとき」という概括的な表現がされている。したがって、同号但書の判断にあたっては、市町村長の裁量が認められる。
2、本件基準の法的性質及び内容
 本件基準には危険物政令9条1号但書の適用をする場合の基準が定められている。もっとも、消防法10条4号は政令に委任をしているのみであるから、本件基準は法の委任を受けていない。したがって、本件基準は裁量基準である。
次に、本件基準①が適用されるか検討する。Xは工業地域に所在する一般取扱所であるから、倍数の上限は50であるところ、本件取扱所における倍数は55であり、本件基準①をみたさない。
 また、本件基準②について検討するに、Xは灯油を取り扱っているので、第2石油類を取り扱っている(消防法2条7号)。そして、上記のとおり倍数が55であり10以上であるから、保安物件から20メートル以上の距離を保たなければならない。しかし、本件取扱所は本件葬祭上から18メートルしか離れていない。したがって、本件基準②もみたさない。
 もっとも、本件基準が不合理であれば、危険物政令9条1号但書によって保安距離を短縮することができるので、消防法10条4項の技術上の基準に適合しないとはいえない。したがって、消防法12条2項に基づく本件命令も要件をみたさず違法となる。
 そこで検討するに、前述のとおり危険物政令9条1号但書は、保安物件内にいる人に対する火災の危険を避けるとともに、製造所の移転に伴う負担をできる限り避けようとする趣旨である。そうすると、他の法律では問題なく一般取扱所を建築でき、倍数に関する制限もない地域において、本件基準によって倍数の制限を課し、これに従わない場合には移転の義務を負わせるのでは、製造所の移転に伴う負担をできる限り避けようとする同号但書の趣旨に反する。本件取扱所が設置されていた場所は工業地域であり、倍数に関する制限はない。にもかかわらず、本件基準①によって倍数制限をするのは不合理である。
3、危険物政令23条
 まず、危険物政令9条1号但書が適用されるならば、同令23条は適用されないのではないかが問題となる。しかし、同令23条は特殊な構造を有する危険物施設が存在することを考慮した規定であり、倍数などに着目した同令9条1号但書とは考慮要素が異なる。したがって、両規定は併存しうる。
 そして、本件では本件基準③の定める高さ以上の防火塀の設置や、法令で義務付けられた水準以上の消火設備を増設する用意があることから、「火災・・のおそれが著しく少なく・・かつ、火災等の災害による被害を最小限度にとどめることができると認められるとき」にあたる。したがって、危険物政令9条は適用されない。
4、以上より、消防法10条4項の要件をみたさないとはいえないので、本件命令は要件をみたさず違法である。

設問3

 損失補償が認められるためには、特別の犠牲が生じている必要がある。本件において、消防法12条は、取扱所の所有者等に対して、10条4項の技術上の基準に適合するように維持すべき義務を課している。その趣旨は、取扱所が危険物を取り扱う場所であることから、取扱所を設置しようとする者に対して技術上の基準を遵守させることによって、国民の生命、身体及び財産を火災から保護する点にあると考えられる。このように、10条4項は、取扱所において危険物が取り扱われることを前提とした規定である。そうすると、かかる危険物の危険が現実化した場合には、危険物が有していたもともと危険が現実化したにとどまるので、特別の犠牲が生じるとはいえない。本件では、本件命令によって本件取扱所が移転することによって生じる費用は、本件取扱所がもともと有する危険が現実化したために生じた費用であるから、特別の犠牲が生じていると思える。
 しかし、本件葬祭場の所在地は、もともと第1種中高層住居専用地域であり、葬祭場を建築することができない場所であった。本件葬祭上を建築することができるようになったのは、第2種中高層住居専用地域に指定替えがされたためである。そうすると、このような指定替えと本件命令をあわせて考えると、もともとは本件命令を受けることはなかったはずのXは、指定替えによって本件命令を受けることになっており、本件取扱所の移転をせざるを得なくなっている。したがって、特別の犠牲が生じているといえる。
 よって、損失補償を請求することができる。


設問1 処分性の定義を書いておけばよかった。
設問2 正直よくわからなかった。本件基準①②の不合理性を指摘しようと思ったが、時間がなかったため②の方は省略せざるを得なかった。また、危険物政令9条1項1号但書と23条との関係を十分検討することができなかった。
設問3 まさかの損失補償。過去問で一度出題されていたので、出ないだろうなと勝手に思ってしまった。判例は知っていたけど、なんとなくのレベル。「公共のために」の検討をしていないのもマズイ。
# by mizutamaa | 2015-06-04 20:00
設問1

1、Bは甲社に対して任務懈怠責任(423条1項)に基づく損害賠償責任を負わないか。
 その要件は、①役員等、②任務懈怠、③損害、④因果関係、⑤故意又は過失である。本件では、Bは取締役であるので、①をみたす。そこで、以下ではBの競業避止義務違反(356条1項1号)及び忠実義務違反行為(355条)について、②~⑤の要件をみたすか検討する。
2、競業避止義務違反
(1)競業取引規制の趣旨は、取締役が会社の企業秘密や顧客情報を利用して取引することで会社に損害を与えることを防止する点にある。したがって、「事業の部類に属する取引」とは、会社が現に行っている取引と目的物および市場が競合する取引または、会社が現に行っている取引でなくても、会社が取引しようと予定している取引と競合する取引をいう。
 本件では、甲社は洋菓子を製造しているのに対して、乙社も洋菓子を製造しているので、目的物が競合している。しかし、甲社は首都圏で販売しているのに対して、乙社は関西地方で販売しており、市場が異なる。したがって、甲社が現に行っている取引との関係では、競業取引にあたらない。
 もっとも、甲社は関西地方への進出を企図して、マーケティング調査会社に市場調査を委託して500万円を支払っているので、甲社は関西地方での販売を具体的に予定していたといえる。したがって、甲社が具体的に予定していた取引との関係で、乙社の取引は甲社の「事業の部類に属する取引」にあたる。
(2)423条2項の規定は、利益が帰属する者に対して適用すべきであるから、「ために」とは「計算で」という意味と解する。本件では、競業取引による利益は乙社に帰属するので、Bは乙社という「第三者のために」競業取引している。
 もっとも、Bは乙社の代表取締役ではないから、競業取引の規制を受けないとも思える。しかし、Bは乙社の発行済株式の90%を取得するとともに、乙社の洋菓子事業の陣頭指揮を執っていることから、Bは事実上の主宰者の地位にあるといえる。したがって、競業取引の規制を受ける。
(3)以上より、乙社の取引は競業取引にあたり、その取引をする際には、取締役会決議が必要となる(365条1項、356条1項1号)。本件では、特別利害関係人(369条2項)であるBを除いたAおよびCが、乙社が上記の取引をすることについて特段の異議を述べなかったことから、取締役会決議があるとも思える。しかし、十分な協議をして同意しているわけではないので、取締役会決議があるとはいえない。
 したがって、本件では365条、356条1項1号違反があるので、②任務懈怠が認められる。また、423条2項により、③損害は会社が得た利益である800万円と推定され、④因果関係も認められる。さらに、⑤故意又は過失もあるといえる。
(4)以上より、Bは甲社に対して800万円の損害賠償責任を負う。
3、忠実義務違反
 Eを引き抜いた行為が取締役の忠実義務に違反しないか。
 取締役は会社に対して忠実義務を負っているので、重要な地位にある従業員を引き抜くときには、会社に損害を与えないように配慮する義務があると解する。
 本件では、Eは洋菓子工場の工場長を務めており重要な地位にある従業員といえる。にもかかわらず、Bは甲社にあらかじめEが同社を辞めることを伝え代わりの工場長を派遣させる機会を与えずに、突然退職させているので、忠実義務に違反する。したがって、②任務懈怠が認められる。その結果、甲社の洋菓子工場は操業停止を余儀なくされ、3日間受注できなくなったことから、300万円の損害が「生じている。よって、③損害、④因果関係が認められる。また、⑤故意又は過失も認められる。
 したがって、Bは甲社に対して300万円の損害賠償責任を負う。

設問2

1、第1取引及び第2取引が事業譲渡(467条1項2号)にあたらないか。
 この点、事業譲渡とは、①一定の事業目的のために組織化され有機的一体となって機能する財産の譲渡で、②譲受人による事業活動の承継、③譲渡会社による競業避止義務の負担を伴うものをいうとする見解もある。
 しかし、事業譲渡について株主総会決議を要する趣旨は、事業譲渡が株主に重大な影響を与えることから、その判断にあたっては株主の承認を要するとした点にある。かかる趣旨からすると、事業譲渡にあたるかどうかの判断は、①のみを基準にすべきである。実際、本件のように事業譲渡の当事者間で、譲渡人が競業避止義務を負うという特約をすることによって、株主に重大な影響を及ぼす取引であっても、取締役会決議のみで足りる(362条4項1号)とするのは不当な結論である。
2、もっとも、第1取引と第2取引を別個に考えるとすると、第2取引の代金は1億円であり、甲社の資産額である7億円の5分の1を下回るので、株主総会決議は不要ということになる(467条1項2号かっこ書)。
 しかし、第1取引と第2取引は10日の間が空いているにとどまる。また、甲社は世界的に著名なP社ブランドの日本における商標権をP社から取得しており、P商標を付したチョコレートが甲社の洋菓子事業部門の主力商品となっている。そうすると、洋菓子工場に係る土地及び建物に関する第1取引と、P商標に係る商標権に関する第2取引とは一体のものとみるべきである。
 このように解すると、第1取引及び第2取引は「事業の重要な一部の譲渡」にあたる。
3、そして、本件では株主総会決議を経ていない。前述のとおり、事業譲渡は株主に重大な影響を与える取引なので、株主総会決議を経ていない取引は一律に無効になると解する。
 したがって、第1取引及び第2取引は無効になる。

設問3
 
設問1は競業取引のところで、どのようにして取締役会決議がないという結論を導けばよいか分からず、適当な論述になってしまった。
設問2では「重要」と「事業の・・一部の譲渡」とを分けて検討できなかった。なにより、問題文の事情をあまり引用できなかったことが痛い。資料については、どう使えば良いかいまいちわからなかった。
設問3は、本番では数行書いたか、的外れなことを書いたと思う。途中答案だけはしないようにと思っていたのに、実質的には途中答案であり、悔やまれる。
# by mizutamaa | 2015-05-28 23:45
設問1

1、小問(1)
(1)AはBとの間で丸太に関する売買契約を締結しているが、所有権の移転時期は代金の支払時となっていた。本件では、Bは売買代金の支払いを拒絶していることから、丸太の所有権は依然としてAにある。そこで、Aは材木①の原料となった丸太の所有権がAに属することを根拠に、材木①の所有権がAに帰属すると主張する。
 もっとも、Bは丸太を製材して材木①にしていることから、加工(246条1項但書)によって所有権を取得していないか検討する。本件では、丸太は1本あたり15万円の価値であったところ、Bが製材した後の材木①の1本あたりの価格は20万円であり、工作によって生じた価格は5万円にとどまる。これは材料15万円の価格を「著しく超える」とまではいえない。したがって、246条1項但書は適用されず、原則どおり、材木①の材料となった丸太の所有者であるAに所有権が帰属する。
(2)C は即時取得(192条)を主張する。
C はBとの間で材木20本に関する売買契約を締結しているので、「取引行為」がある。また、C はそのうちの材木①を倉庫に保管しているので、「占有を始めた」といえる。さらに、「平穏」「公然」の要件もみたす。
 「善意」とは、相手方が権利者であると信じることをいう。本件ではAが丸太を売却するときには、所有権の移転の時期を代金支払時とするのが通常であることを知っていたが、本件売買契約においては、代金の支払いが既にされていると考えていたので、Bが材木①の処分権限を有する者と信じていたといえる。
「無過失」とは、権利者であると信じることにつき過失がないことをいう。本件では、Aが丸太を売却するときには上記のような所有権移転時期に関する特約をするのが通常であることを知っていたこと、最近AB間で代金支払い前にBがAに無断で丸太を売却したトラブルを知っていたことからすれば、今回の取引でもBは代金を支払う前に売却している可能性が高い。そこで、C にはBに処分権限があるかどうかを調査する義務があるといえる。ところが、C はA及びBに対する照会をせずに取引に応じていることから、かかる調査義務を怠っているといえる。したがって、「無過失」とはいえない。
 よって、Cの反論は認められない。
(3)したがって、Aは材木①の引渡しを請求できる。
2、小問(2)
(1)前述のとおり、Aは材木の所有権を有する。ところが、C は材木②を用いて乙建物の柱を取り替えているので、材木②は「不動産に従として付合した」(242条本文)といえる。したがって、材木②の所有権は乙建物の所有者であるDに帰属する。そこで、Aは248条を根拠に償金請求すると考えられる。具体的には、材料②の価格1本あたり20万円×10=200万円の請求をする。
(2)Dは即時取得を主張する。
 まず、Cとの間の請負契約が「取引行為」にあたるか問題となる。しかし、本件では請負契約締結の際にCから、甲土地から切り出され、Bが製造した質の高い材木10本を使用する予定であるとの説明を受けている。そうすると、本件請負契約は材木②の所有権の移転も内容とするものであったといえる。したがって、「取引行為」にあたる。また、DはCに処分権限があると信じていたうえ、過失もないことから善意無過失といえる。したがって、即時取得は認められる。よって、Dの反論は認められる。

設問2

1、小問(1)
 GはFが本件土地の登記を具備したことによって所有権がFに移転し、Eは所有権を喪失したことを根拠に、Eの請求を拒否する。具体的には、①AはFに本件土地を売ったこと、②Fは本件土地に関する対抗要件を具備したことを主張立証すべきである。
2、小問(2)
 Gは丸太④の保管料請求権を被担保債権として、留置権(295条1項)を根拠にEの請求を拒否する。ここで、保管料請求権が「その物に関して生じた債権」といえるか。
 留置権は物を留置することによって弁済を心理的に強制し、間接的に弁済を促すための担保物権である。したがって、「その物に関して生じた債権」といえるためには、物を留置することで間接的に弁済を促す関係が認められる必要がある。よって、引渡請求権者と、被担保債権の債務者とが同一でなければならない。
 本件では、引渡請求権者はEであるのに対して、被担保債権の債務者はFであり同一ではない。したがって、保管料請求権は「その物に関して生じた債権」とはいえない。よって、Gの主張は認められない。

設問3

1、小問(1)
 Lは709条を根拠にC に対して損害賠償を請求する。
 この点について、本件ではHが15才であり、責任能力があると考えられるから、Cに対して714条1項に基づく請求をすることはできない。したがって、714条1項の要件をみたさない以上、監督義務者に損害賠償を請求できないとも思える。しかし、714条1項の趣旨は被害者救済の観点から立証責任を軽減する点にある。したがって、714条1項の要件をみたさない場合でも、監督義務の懈怠と未成年者の行為との間に因果関係がある限り、709条に基づき損害賠償を請求できると解する。
 本件では、Hは粗暴な性格であり喧嘩で同級生を怪我させたり、悪質ないたずらをしたりして、Cは何度も学校に呼び出されていた。にもかかわらず、Cは何が悪いのかを教えたり、反省を促したりするようなことをせず、他人に迷惑をかけてはいけないといった一般的な注意をするにとどまっていることから、監督義務を怠っている。また、監督義務の懈怠とCが本件角材を道路の一部を横切るように置いたこととの間には因果関係が認められる。
 したがって、Lの主張は認められる。
2、小問(2)
 Cは、被害者であるLには過失がないが、Kに過失があることを根拠に過失相殺(722条2項)を主張する。
 過失相殺は被害者と加害者との間で損害の公平な分担を図る目的で認められる制度である。そして、被害者と経済的一体性を有する者からの損害賠償の回収リスクは、加害者でなく被害者に負担させるのが公平といえる。したがって、被害者と身分上・生活関係上一体といえる者の過失も、被害者側の過失として過失相殺にあたって考慮できると解する。
 本件では、KはLの母親であるから、Lと身分上・生活関係上一体といえる。そして、Kは携帯電話で通話しながら自転車を運転していたり、故障した前照灯の修理をしないまま自転車で走行している。このようにKは自転車を運転する際に安全を図るための注意義務を怠っていることから、過失が認められる。
 したがって、Kの過失に基づいて過失相殺することができる。よって、Cの反論は認められる。


6枚目の数行まで書いた。
設問1(2)のDの反論で即時取得を書いたが、ここは間違いだと思う。現場でパニックになってしまった。
設問2(1)は対抗要件具備による所有権喪失の抗弁にしたんだけど、どうだったんだろう。
設問3(1)は時間が足りなかったせいもあるが、監督義務違反をうまく認定できなかった。ここはきれいに評価して書く人が大勢いると思うので、差がつきそう・・
# by mizutamaa | 2015-05-28 14:53
第1 甲の罪責

1、新薬の書類を持ち出した行為
(1)新薬の書類を持ち出した行為について、窃盗罪(235条)と業務上横領罪(253条)のいずれが成立するか。
 両罪の区別は、甲が新薬の書類を持ち出した12月15日の時点において、新薬の書類が甲の占有に属するかどうかで判断する。
 本件では、新薬の書類にはA社の新薬開発チームが作成した新薬の製造方法が記載されており、機密情報が記載されていたといえる。そして、甲社では、各部においてそのような業務上の情報等をそれぞれ管理していた。そして、新薬開発部の部長は同部の業務全般を統括し、上記のような新薬の書類を管理する業務に従事していたことから、新薬開発部の部長には、新薬の書類に対する占有が認められる。したがって、12月2日までは甲は同部の部長だったので、甲に新薬の書類に対する占有が認められる。
 しかし、甲は12月3日付けで財務部経理課に所属が変わり、新薬開発部の後任の部長に引き継ぎを行って、新薬の書類が保管されている金庫の暗証番号を教えている。A社では各部において業務上の情報等をそれぞれ独立に管理していること、互いに他の部から独立した部屋でh業務を行っていたことからすれば、新薬開発部の部長であった者でも、財務部経理課へと所属が変われば、新薬開発部の機密情報が書かれた新薬の書類に対する占有は失われると考えられる。したがって、12月3日時点における新薬の書類に対する甲の占有は失われているといえる。そこで、窃盗罪を検討する。
(2)「他人の財物」
 「財物」とは有体物をいうので、情報自体は「財物」にあたらない。もっとも、情報も紙に記載されれば「財物」にあたる。本件の新薬の書類は、機密情報が紙に書かれたものなので、「財物」にあたる。また、新薬の書類に記載されていた情報は機密情報であたり価値が高いので、窃盗罪の客体から除外されない。
(3)「窃取」
 甲は、A社の意思に反して、新薬の書類を持ち出し、占有を自己に移転させているので、「窃取」にあたる。
(4)したがって、窃盗罪が成立する。
2、C所有のかばんを奪った行為
(1)まず、甲はC所有のかばんの持ち手を手でつかんで引っ張ってかばんを取り上げただけであり、反抗抑圧するに足りる程度の暴行までは加えていないので、強盗罪(236条1項)は成立しない。
(2)では、窃盗罪が成立しないか。
 甲はCの意思に反してC所有のかばんを自己の占有に移転させているので、窃盗罪の構成要件に該当する。
(3)もっとも、甲は自己のかばんを取り戻していると考えているので、故意(38条1項本文)が認められるか。
 自力救済は原則として禁止されているので、事実としての財産状態を保護する必要がある。したがって、窃盗罪の保護法益は占有それ自体と解すべきである。そうすると、所有者が自己の物を取り返す行為も窃盗罪の構成要件に該当する。
 もっとも、目的が正当であり、手段が相当な場合には、社会的に相当な行為といえ違法性が阻却される。
 そこで、甲が認識していた事情が実際にあった場合、上記の違法性阻却事由にあたるか検討する。
 本件では、自己が所有するかばんを取り返す目的であったから、目的は正当といえる。また、甲はいきなりCからかばんを奪っているわけではなく、「返してくれ。」とお願いしたにもかかわらず、Cが無視したことから、やむを得ずかばんを奪っている。また、その際も、手でつかんで引っ張ってかばんを取り上げるにとどまっている。したがって、手段も相当といえる。よって、甲は違法性阻却事由を誤認識していたといえる。
 そして、違法性阻却事由の錯誤は、違法性を基礎づける事実の認識がない点で、反対動機を形成することができないので、故意が阻却されると解する。
 よって、甲に故意は認められない。
(4)したがって、窃盗罪は成立しない。後述のとおり、乙とは共同正犯(60条)となる。
3、また、甲の上記の行為によってCは怪我をしている。上記のとおり、違法性阻却事由を認識しており、故意は認められないので、過失致傷罪(209条1項)が成立するにとどまる。

第2 乙の罪責
(1)実行行為をしていない乙に、窃盗罪の共謀共同正犯が成立しないか。
 共謀共同正犯も1次的責任を負う正犯である以上、①共謀、②①に基づく実行だけでなく、③正犯性も必要である。
(2)共謀
 乙は、甲が新薬開発部の部長であることを知り、新薬の書類を持ち出すように指示し、これを受けて甲は「分かった。」と承諾している。前述のとおり、新薬開発部の部長である地位は、背新薬の書類の占有を基礎づけるものである。したがって、甲乙間には業務上横領罪の共謀が成立する。
(3)共謀に基づく実行
 もっとも、甲が実際に行ったのは窃盗罪である。そこで、共謀に基づく実行があるといえるか。
 この点については、共謀に基づく因果性が甲の行為に及んでいるかで判断する。
本件では、甲乙は書類の持ち出しについて共謀を遂げており、実際に甲は書類を持ち出している。窃盗罪が成立するのは、甲に書類の占有が認められないからだけであり、他に特に因果性が及んでいないとする事情はない。したがって、甲の行為に因果性は及んでいるといえる。よって、②もみたす。
(3)正犯性
 たしかに、甲は部長であるのに対し、乙は後輩であり、乙の方が地位が上であるという事情はない。しかし、乙は、指示通り書類を持ち出せば300万円を支払うこと、乙の会社の支社長として迎え入れることを申し出ており、甲の心理に重大な影響を与えている。また、書類の持ち出しは乙の利益になる行為である。
 したがって、正犯性が認められる。
(4)故意
 もっとも、乙は業務上横領罪の故意で、実際には窃盗罪の結果が生じていたので、故意が認められるか。
 認識事実と客観事実が異なる構成要件にまたがる場合であっても、実質的に重なり合う場合には、その限度で反対動機が形成できるので、故意が認められる。業務上横領罪と窃盗罪は他人の物の領得という点で実質的な重なり合いが認められる。したがって、窃盗罪の故意が認められる。
(5)よって、窃盗罪の共謀共同正犯が成立する。
 なお、乙は後に甲が財務部に所属が変わったことを認識しているが、既遂後の事情であり、犯罪の成否に関係ない。

第3 丙の罪責
窃盗罪が成立しないか。
(1)丙が甲のかばんを持ち出した時点で、かばんに対する甲の占有は認められるか。
 窃盗罪における占有は、事実的支配を意味する。もっとも、占有の態様は物の状態等によって様々なので、占有の事実と占有の意思を総合して社会通念によって判断すべきである。
 たしかに甲は自動券売機に向かって立っており、かばんが置かれた待合室を見ることはできない。また、待合室は誰でも利用できる場所であった。
しかし、丙がかばんを持ち出したときに待合室を利用した者は甲と丙のみであった。また、自動券売機と待合室とは20メートルしか離れておらず、甲が離れてから丙が犯行に及ぶまでの時間も1分にとどまり、時間的場所的近接性が認められる。
したがって、社会通念によって判断すれば、丙の持ち出し時にカバンに対する甲の占有は認められる。
(2)もっとも、窃盗罪が毀棄罪よりも重く処罰されるのは、財物を利用しようとする意思が強い非難に値し、重い責任が認められるからである。したがって、窃盗罪が成立するためには、経済的用法に従い利用処分する意思が必要であると解する。
 本件では、他人のかばんを盗み交番に申し出ることによって、逮捕され留置施設で生活することを目的として行為に及んでいる。これはかばんの効用を利用する行為とはいえないので、経済的用法に従い利用処分する意思は認められない。
 したがって、窃盗罪は成立しない。よって、丙は罪責を負わない。

第4 まとめ 
以上より、甲には窃盗罪と過失致傷罪が成立し、併合罪(45条後段)となる。乙には窃盗罪が成立する。


8枚目まで書いた。
甲の2つ目の行為について、故意の有無を検討するにあたって、いきなり保護法益の話をしてしまい舌足らずだったと思う。
丙の罪責のところで占有の有無を検討するところがうまく書けなかった。メインの論点だと思われるので、ここで事実をうまく評価できなかったのは痛い。
# by mizutamaa | 2015-05-28 14:41

by く~ねる